寝姿さまざま やすらかな眠りを 

すやすやと眠る子どもを見ていると心がやすらぐ。
無垢懸世俗に染まっていない寝顔は天使にたとえられる。
子どものようにやすらかに眠りたい。そう感じる人は多い。

だが、子どもの頃はどうだったろう。
私は子どもの頃、暗い部屋で1人寝床に入ると、ずっと夜のまま朝が来なかったら、このまま目が覚めなかったら、と心配だった。
怖い夢を見て夜に目覚めたときも言い知れぬ怖さを感じた。

モーツァルトの子守唄【オルゴール】

私たち大人は、眠って意識のない状態になっても、明日もまた自分の意識が続くことを知っている。
ドイツの哲学者クラーゲスの指摘だ。
しかし、大人と異なり、子どもにとって眠りに入ることは、意識が途切れ、自分がなくなってしまうかのように感じられる。

それが怖さの正体と思う。
それに加え、子どもの夢の内容を調べると約90%が悪夢という研究結果がある。
子どもの睡眠中の体験は、私たちが端から見て感じる印象とは異なっている。

睡眠医学の創始者である米国のデメント博士は、野外でキャンプしたときを思い起こし、「私たちは母なる自然の心地よい腕の中で揺すられ、古代の人が見た夢に戻って行く……」と古代の眠りへの憧憬を述べた。昔の人は自然でゆったりした夜の時聞を体験していたのではないかという想像と、それを私たちが失ってしまったという感慨がここに表れている。
しかし、本当にそうだったのだろうか。

数百年前まで夜は本当の闇だった。
米国の歴史学者エカーチ博士の研究によると、欧州では実際に闇に紛れた盗賊や羊を狙う夜行性の獣の危険が犬きく、闇への本能的な警戒心もあって、夜は恐怖や不安に満ちていた。
安全がないと安心しで眠ることはできないのだ。

昔の人の眠りはやすらかなものではなかったようだ。
人々は、夜中に目を覚まし、警戒を怠らなかった。
ただし、そうした目覚めの時間に自然への畏れを知り、自然と私たちの関係について謙虚に考え、人間の力の無さを感じたという。
現代の私たちが失ったのは、実はこういう時間だ。

夢見るシャンソン人形 Poupée de cire, poupée de son

やすらかな眠りはどこにあったのだろう。
歴史の中ではごく最近になるまで見つからない。昔はなかったのだ。
人類が自然と闘い、知恵を振り絞って努力し、達成してきた文明、それがもたらす安全が確保されて初めで、私たちはやすらかな眠りを手にした。
私は自然よりも人間の作ってきた文明が好きだ。
 From:『きょうの健康』 2013.3.  内山真

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