止めても良い下痢と、止めてはいけない下痢があります。症状をよく見極め、診察してもらい、適切な治療をしてくださいね。

************************

「お腹にくる風邪」って、なんじゃそりゃ!?

風邪とは「上気道のカタル性(じくじくした状態)の炎症」のこと。
よく「今年の風邪はお腹にくる」などと言うが、風邪の定義は上記の通りだから、お腹にくるなんて100%ありえない。

下痢などして「お腹にきている」なら、この場合、正しい病名は「感染性腸炎」だ。
たまに、発熱+下痢=「お腹にくる風邪」と自己判断して「市販の風邪薬を飲んでも良くならないんで来ました」という患者さんがいるが、当ったりめえだ。
上気道炎の症状緩和薬が下痢に効くわけないだろ?

そういう患者さんに「じゃあ、風邪って何?」と聞くと、「……」となる。
知らないのに、己の症状を風邪だと決めつけているわけだ。

だから「風邪は万病の元」なんてことがまことしやかに言われる。
風邪はあくまで風邪であって、一病の元にもならないっつーの。

下痢という症状を少し説明しておこう。小腸・大腸の粘膜は、アナタが飲み食いしたブツから水分を吸収する役割を担っている(小腸は栄養の吸収も行う)。
病原体は、ほとんどこの粘膜内で増殖して炎症を引き起こし、水分の吸収という粘膜の機能の不全が起こる。
その結果、水溶状のブツ、いわゆる下痢便が排出されるわけじゃ。

これは体の防御反応のひとつでもある。
体内に侵入した病原体を少しでも早く体外へ排出しようとする働きだ。
だから、 感染性の下痢ピーは止めてはいけないのだ。

止めていいのは、毎日出勤前にもよおすような、自律神経の失調による過敏性腸症候群の下痢。
「下痢は止めましょう」と言わんばかりのおクスリのCMを頭から信じてしまうと、ウイルスを体内に留めてしまう恐れもあるぞ。

 下痢の仕組み

オイラの勤務先は老人介護施設と提携を結んでいて、年配の方の失調を治療しているが、施設の職員が「風邪をひいちゃって」とか言いながら利用者さんを連れてくることがある。
聞けば下痢して吐いているっていうのだが、ふざけないでほしい!
健康に人一倍気を遣うべき人たちを相手にする者として、危機意識が欠如しているとしか思えない。

「お腹にくる風邪」だと思っているから、隔離などの対策もしないまま、施設内で大流行させてしまう。そうじゃないの? 院内感染の根源は。
毎年12月頃から、ノロウイルスが原因と思しきゲロゲロ下痢ピーの患者さんが出始めるが、新聞には堂々と「お腹にくる風邪、感染性胃腸炎云々」と見出しに書かれていたりする。

表現と病名の誤りについて、その新聞に投書をしたが一蹴されてしまった。
医者の一人として日本医師会を巻き込む必要性を強く感じた次第だ。

下痢という症状を外して「風邪」と診断するから、ノロウイルスなどが蔓延して命を落とす人まで出てくる。
「お腹にくる風邪」と思い込んで風邪薬を飲むアナタも認識不足で×だ。
健康ブームとかいって、体に良いことにお金を使っているくせに、病気について知ろうとしない。
その根底には「医療は施されるもの」という思考が存在するのではないだろうか
From:『医者が教える、知らないと怖い50の真実』酒匂常男

いとう治療院(はりきゅう 目黒区)は、
病気と健康についてご相談を受けております。